平野紗季子がうどん県を巡る。「食文化」から紐解く、かがわ暮らしの良さとは

移住で重要なポイントになるのが、食生活。全国一うどん店が多い香川県は、「うどん県」とも呼ばれています。しかし、じつはうどん以外にも名産品や名物グルメなどがあるのをご存知でしょうか?

そんな香川県の「食」の魅力に触れるべく、フードエッセイストの平野紗季子さんが弾丸グルメ旅へ。生粋の「ごはん狂」として知られる平野さんが、独自の視点で食文化を紐解き、香川県での暮らしやすさを掘り下げます。

また、このサイト内でこれまで公開してきた、漫画『かがわ移住物語(子育て編 / グルメ編 / お仕事編)』に出てくる箇所もいくつか巡ってきました。実際に平野さんに体験していただきつつ、香川移住の魅力に迫ります。

文:宇治田エリ 写真:宮脇慎太郎 編集:吉田真也(CINRA)

プロフィール

平野 紗季子

フードエッセイスト。1991年福岡県生まれ。小学生から食日記をつけ続け、大学生時代に日常の食にまつわる発見と感動を綴ったブログが話題になり文筆活動をスタート。雑誌『Hanako』『POPEYE』などで多数連載を持つほか、イベントの企画運営・商品開発など、食を中心とした活動は多岐にわたる。著書『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)。

うどん県に上陸。本場の「かけ」と「ぶっかけ」を食べ比べ

東京から飛行機で1時間半。香川県の空の玄関口、高松空港へ到着。そこから車で約40分かけて善通寺市へ向かいます。

まず向かったのは、香川県に移住したら何度でも食べたくなりそうな「讃岐うどん」店。県内に700店以上あるといわれるうどん店は、営業スタイルもさまざま。通常の飲食店のようにスタッフが注文を取りに来てくれる一般店スタイルをはじめ、うどんの注文から席に運ぶまでを自分で行うスタイルや、うどんが入ったどんぶりを受け取り、自分で蛇口をひねって出汁をかけるセルフスタイルなどがあります。

サイドメニューも豊富で、他県でもおなじみの天ぷらは種類がたくさん。また、漫画『かがわ移住物語(グルメ編)』でも描かれていますが、おでんのあるお店が多いのも香川のうどん店ならでは。

平野紗季子さん。おでんは「牛すじ」をチョイス

平野さんは、もともとうどんが大好きで普段からよく食べているとのこと。この日は、本場の温かい「かけうどん」と冷たい「ぶっかけうどん」の違いを確かめるため、食べ比べてみることに。まずは「かけうどん」からいただきます。

水で締めた麺に熱い出汁をかけた「ひやあつ」のかけうどん

平野:つるっとした食感と、のど越しが最高に気持ちいい! 本場のかけうどんは「のど遊び」に最適ですね。いりこの出汁のうま味が安心感を与えてくれます。

「かけうどん」ののど越しの良さを、「のど遊び」という独特な言い回しで表現した平野さん。続いては「ぶっかけうどん」。

さっぱりと食べられるぶっかけうどん

平野:ん! かけうどんと打って変わって、コシによる「跳ね返し」がすごい。「食べられたくないのでは?」と思えるほどですね(笑)。トッピングされているレモンと生姜の爽やかさもマッチしています。

夏は「ぶっかけ」でさっぱり、冬は「かけ」でほっこりと、通年でおいしく食べられる香川のソウルフード。また、ひとくちに「うどん店」といっても、それぞれの店舗で形態やメニューが異なるため、飽きがきません。しかも、一杯100円台で食べられるお店もいくつかあります。香川に住んだら、うどん屋巡りも楽しみのひとつになりそうです。

都会にはない、のどかな雰囲気。気分転換に善通寺の街をお散歩

うどんを食べてお腹が満たされた平野さん。腹ごなしに善通寺駅周辺を散策します。知名度は高松市のほうが高いかもしれませんが、ここ善通寺市も移住に適した街。中心部には、弘法大師(空海)の誕生の地でもある「善通寺」があり、歴史を感じる街並みも相まってのどかな雰囲気です。

ゆったりとした時間が流れる善通寺周辺は、お散歩にぴったり

平野:散歩好きなので東京にいるときもよくウロウロしてますが、都会とは違って、のんびりとした日常生活が過ごせそう。公園や広場で遊ぶ子どもたちがたくさんいて、のびのびとした姿が印象的ですね。

漫画『かがわ移住物語(子育て編)』にも出てくる善通寺市。漫画の内容どおり、子育てしやすい街です。幼稚園や保育所が無料で利用できるなど育児制度も充実しています。

ちなみに、善通寺市だけでなく、香川県全域で子育て支援には力を入れています。中学卒業まで医療費が無料になるなど、安心して子育てできる環境が香川にはあります。

あちらこちらに掲げられているレトロな看板や、昔ながらのお店の外観にノスタルジーを感じます。善通寺駅の周辺は落ち着いた雰囲気ですが、市内には大型スーパーや飲食店も多く点在しています。ほど良く便利でゆったりした生活を送りたい人には、住みやすそうな街でした。

パワーみなぎる香川のB級グルメ。みんなでワイワイ食べたい「骨付鳥」

香川といえばうどん……だけではありません。地元民が居酒屋に行くとついつい頼んでしまう、丸亀発祥の「骨付鳥」も香川県のソウルフード。その名の通り、骨つきの鳥もも肉を丸ごと1本使い、オーブンを使って焼き上げた大人気のB級グルメです。

発祥の丸亀市はもちろん、高松市にも数多くの骨付鳥の名店があります。昼間にたくさん歩いた平野さん、夜はがっつり食べたい! ということで、骨付鳥店へ。親鳥と若鳥の2種類を注文し、ここでも食べ比べをしました。

歯ごたえがある「親鳥」

ジューシーで柔らかい「若鳥」。数人で食べる場合、セルフではさみを使って取り分けるのが一般的。お皿に溜まった肉汁や油をつけて、添えつけのキャベツを食べるのも楽しみ方のひとつ

平野:はさみを入れただけで、皮のパリッと感が伝わる! 若鳥はとてもジューシー。ニンニクの効いたスパイシーな香りが、うま味をさらに引き立てますね。ビールやハイボールに合うので、みんなでワイワイ楽しむ場で食べたいかも。あと、油にキャベツをつけて食べるのもおいしい。親鳥は肉質からしてまったく違っていて、食べ応えのある玄人好みな味。私は親鳥のほうが好きかも。

漫画『かがわ移住物語(グルメ編)』でも、ビールのお供として紹介されている骨付鳥。平野さんが訪れたお店でも、団体でいらした地元のサラリーマンが骨付鳥を食べながら、お酒を飲んで盛り上がっていました。会社の仲間たちと仕事帰りに立ち寄れば、次の日の活力にもなりそうです。

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