香川県高松市出身。中学校から東京へ。
東京で6年間暮らしていたアパートで上下左右の部屋に住んでいる人と顔を合わすことがない環境を寂しく感じ、人とのふれあいを実現したくて10代の後半から世界各地を旅する。
草履の材料の七島藺(しちとうい)の栽培をする地を求めて、故郷の香川県へ。
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昔の人の知恵を未来に伝える山暮らし
寺田真也さん(七島草履の達痲工房):まんのう町在住・2011年移住・40代
草履の材料の七島藺(しちとうい)の栽培をする地を求めて、故郷の香川県へ戻った寺田さん。
「山暮らし」ができるまんのう町へ
山の中で暮らしたいっていう気持ちはもともとありました。草履の材料の七島藺(しちとうい)を栽培する土地を探して香川に帰ってきたんですけど、七島藺は株で増えるので、一度植えると、ずっとそこで増えていく。そういう意味でも、自分が根を張って生きていく場所を探していました。子どもを育てるのに安心な環境というのも大事でしたし。落ち着く場所を探していた時、このまんのう町の琴南に来て「ここに住みたい!」と思いました。水が決め手ですね。山の水で暮らしてくっていうのがいいなと。家はまんのう町の空き家バンクで決めました。
「山暮らし」で思うこと
「山は買い物に行くのも遠くて不便」とよく言われますが、そんなことはないですね。確かに街まで距離はありますが、昔の人は田んぼや山、家の周りで事足りるように暮らしていた。お金で買うのではなく、身の回りのもので何でもできるんです。山で暮らすようになって食べるものに不自由してないです。山暮らしのおかげで価値観がすっかり変わりました。「スローライフ」は実は忙しいんですよ。やることがいっぱい。好きじゃないとできないですね。山での暮らしは生きていく術を身につけるということ。昔の人の生活の知恵を暮らしの中に活かして、子どもたちに伝えていく。自分のこどもの姿を見ていたら、この暮らしは間違いはないと思えます。
そして、こういう田舎は周りの人とのコミュニケーションありき。コミュニケーションが親密だし、重要です。ご近所はお年寄りばかりなので、もちろんメールでのやりとりなんかない。直接会って顔を見て話すことで気持ちがわかるし、伝わります。田舎の人は裏表がないですしね。「生きてる」ということをダイレクトに実感できます。
達麻工房の草履
草履を作って今年で13年目になります。
「一人一人にぴったりのサイズで作りたい」「編みたての香り、色がすばらしいので、その状態のぞうりを渡したい」という想いがあるのでオーダーメイドで作っています。一足一足作ったものをどう想いを伝えるか、考えながらやってきました。楽しいことばかりじゃないけど、やっててよかったと思えることの方が多いですね。
全国各地で草履作りのワークショップもしています。参加者の皆さんが一日かけて自分で一足の草履を作ります。皆さん、ちゃんと自分で作れるんですよ。草履作りは昔の人は誰でもやってたことなんです。だから自分は「職人」ではないと思ってます。今はもうない伝統文化ではなくて、暮らしの中に継続していく知恵として子どもたちの世代、未来に伝えていきたい。ワークショップを通じて、いろんな地域でお互いに作り方を教えあうようなグループができて、それぞれの土地で七島藺を育てて、自分の家族分は作れるようになっていけばいいなと思っています。みんなが草履を作れるようになって、自分は「仕事がない!」って言うのが夢ですね。
移住を考えている人へ
最近、移住を考えている人がよく相談に来てくれるようになりました。この近くにも仲間が数軒移住してきています。ワークショップやイベントの仕事で全国各地を巡っているので、それぞれの土地でものづくりをする人にたくさん出逢う。そういう人で成功している移住者は多いですね。自分で生業(なりわい)を作っていきたい人っていう人は移住はいいと思います。四国の中でそういうネットワークが太くなってきたと感じています。仕事はやる気になったら何でもあるんですよ、特に田舎は。
移住者は後に続く人のために責任があるんです。移住したけど、やっぱり無理だから他へ、っていうのはその土地に元々住んでいる人、受け入れようとしてくれた人の心をまた閉ざしてしまう。移住した土地や人々と、しばらく向き合ってみる事が、とても大切だと思っています。