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「ゲストハウス」理想の場所が高松だった

杉浦 聡美さん:高松市在住・2014年移住・40代

ゲストハウス「TEN to SEN」を開業した杉浦聡美さん

夫が独立を目指したのを機に、理想にかなう場所探しを開始。全国あちこち探し回った末に見つけた地が高松市でした。

兵庫県西宮市生まれ。大阪の都市計画事務所でまちづくりコンサルタントや菓子メーカーの商品企画を担当してキャリアを積む。結婚後は宝塚市に一軒家を構えるも、夫の独立を機にかねてからの夢だった宿泊施設の開業を計画。高松市に移住して2015年4月にゲストハウス「TEN to SEN」を開業

「瀬戸芸」で躍進する香川に決定

2名用個室  生まれも育ちも関西です。でも、ずっと心のどこかに「いつかは宿泊施設をやりたい」と思っていました。仕事の方は、まちづくりコンサルタントや菓子メーカーの商品企画などを担当していてやりがいがあり、実現はまだまだ先だと思っていました。

 36歳になったとき、人生で何かやり残したことがあるのでは、という焦りが出て会社を辞め、世界一周の旅に出たり自宅で主婦業をしたりして過ごしていました。そんなある日、夫が「会社を辞めて独立したい」と言ったのです。私は、オウム返しで「それなら私は宿泊施設をやりたいから、家を売ってもいい?」と言っていました。こうして宝塚を離れることを決め、宿泊施設の場所探しが始まりました。

ドミトリ  条件は3つありました。一つは、まちに特徴がありアートなど女性が好む観光スポットがあること。もう一つは、世代にかかわらず好まれるその土地ならではの食べ物があること。最後に、大・中核都市から車で2〜3時間で行けること。なおかつ関東圏以外の場合は東京間のLCCが運航していることでした。最初に目をつけた場所は高松ではないのですが、肝心の物件探しに難航し、なかなか理想の物件が見つかりませんでした。息抜きに夫婦で美術館巡りをしよう、と高松を訪れたのが2013年の春です。

 訪れたのは久しぶりでしたが、ちょうど2回目の瀬戸内国際芸術祭開催の年で「アート県」と呼ばれていました。私は、活気があるまちの様子を見て、「条件を満たす場所が見つかった!」と大喜びしました。すぐに物件探しを始めて半年後、琴電瓦町駅そばの商店街に近い現在の物件と出会い、即購入。いろいろな方にお世話になりながら、自力でリノベーションをして、購入から1年後にゲストハウス「TEN to SEN」をオープンしました。

「まちなか」暮らしは、ほどよく落ち着ける

フロント  ゲストハウスは私が運営し、前の仕事から独立した夫はフリーランスで仕事をしています。最初はゲストハウスから自転車で7分ほどの場所に住み、夫はそこで仕事をしていました。ですがゲストハウスが忙しくなり、私がほとんど自宅に帰れなくなったため、先日、ゲストハウスからほど近いマンションに移り住みました。商店街のすぐそばで暮らし、仕事をしていることになります。

 瓦町駅付近はとても快適です。商店街は賑やかすぎず、適度にゆるやかな人の流れがあり、ちょうどいい。高松の中心市街地ですが、海が近くて高層ビルがないので開放感があります。地元特産の野菜や新鮮な魚が安く手に入るので、とてもぜいたくな環境だと思います。

選択肢は「多すぎない」高松の暮らし

CAFE & BAR LOUNGE  関西に暮らしていたころは車がありました。高松に来てからは、自転車で10分以内のお店で欲しい物はすべて手に入ります。気がつけば車は月に1、2度乗るか乗らないかという程度だったので、必要な時だけレンタカーを使うことにして、車は1カ月ほど前に手放しました。

 マーケティングのセオリーに、「選択肢が多すぎることの不自由」という言葉があります。選択肢がたくさんあることは一見いいように思えますが、悩んでしまって結局は決められない。だからある程度限定されているほうが良い、という意味です。たとえば商品が何十種類もあると選びきれなくて疲れてしまいます。松・竹・梅や大・中・小など選択肢が少なければストレスなく選択できますよね。そういった意味で、高松はモノやコトが多すぎず少なすぎず、でも必要なものはちゃんとある。そんなちょうどいい感じの生活環境が、とても気に入っています。

(2016年3月取材)